シックハウスが訴訟問題に発展

化学物質の賠償責任が認められる?!

 最近,化学物質が原因で身体の不調を訴えた人が,実際に不動産業者に対して賠償請求したというケースがあります。マンションを購入した住人が,入居数ヶ月の間強い刺激臭を感じたために,ある測定業者に原因を調査した結果,居間のフローリングから発生したホルムアルデヒドがキッチンに滞留していることが判明しました。濃度は0.5〜0.8ppmにも達しており,WHO(世界保健機関)がホルムアルデヒドの許容範囲とする0.08ppmを大きく上回っていました。そのことから,不動産業者に対し「建物に使用している建材と室内の構造に問題があった」として,医師の診断書を添えてフローリングの張り替え費用を請求しました。その結果,不動産業者は「慰謝料」という形で費用を負担しました。訴訟問題にまでは至らず解決しましたが,業者が非を認めるケースは非常に少ないのです。ほとんどの場合,業者は法律上違反はないとして非を認めず,施主と業者との間でもめることが多いのです。

 「PL法(製造物責任法)」という法律が平成7年7月から施行されました。この法律における“製造物”とは,製造または加工された動産のことをいい,土地・建物といった不動産は対象としていません。しかし不動産である建物も,建材や部材の集合体であり,建物の一部であるサッシや壁紙などは対象となります。本来,この法律の趣旨は,製造物の欠陥により被害が生じた場合の被害者の保護を目的としています。すなわち,動産である壁紙や床材から揮発した化学物質により,消費者または第三者の健康を害した場合,それは製造物の安全性が欠如したことになり「欠陥」と見なされるのです。しかしながら,化学物質による健康被害の因果関係を立証することは難しいのです。実際には,個人差や立地条件など状況が様々であることから,「どの製品が欠陥であるか」という特定が非常に困難です。したがって,それらの法律を根拠に,不動産業者や施工業者に対して建て替え費用や賠償を請求することは難しいとされています。特に問題なのが,いまだに住宅建材などの化学物質による室内汚染のガイドラインに関して事実上法的拘束力がないということです。そのため、メーカーや施工業者の化学物質に対する意識向上が強く望まれています。

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