欠陥住宅の現状と実態

増え続ける欠陥住宅被害・・・

 阪神大震災では多くの住宅が全壊しました。その多くが築30年以上の老朽化した木造住宅でした。しかし、築数年の比較的新しい住宅の倒壊も目立ちました。なぜ新しい住宅が倒壊したのか?木造住宅の原因としては,意匠性を重視した無理な設計や壁量不足,筋違の不備,土台の不備,地盤に不適当な基礎などが考えられます。鉄骨系の住宅であれば,溶接不良による破断,ボルトの緩み・閉め忘れなどが原因です。「私の家はまだ新築だから大丈夫」といった意識は非常に危険です。築年数に関係なく,いかにきちんと設計・施工が行われた住宅であるかということの方が重要なのです。

 現在,住宅建築における8割から9割近くに何らかの欠陥箇所があるという調査報告がされています。特に3階建ての建売住宅においては、その不備が非常に多いといわれています。基礎の不良による床や建具の不具合、基礎工事不十分による家の傾斜や壁の亀裂、構造体の緊結不十分による家の揺れ。階段や床のきしみ、雨漏りなどの原因は、欠陥工事が原因であるケースが非常に多いのです。緊結金物不足、ボルトの閉め忘れ、材料不足、数量不足などあげればきりがありません。工事現場では,こうしたズサンな施工や手抜き工事がごく一般的に行われているのです。施主が業者任せであるということに加え,さらに仕事を請け負った業者が下請け業者に丸投げ施工を依頼するといった無責任な工事形態をとっているという所に原因があります。「材工共一式」ともいった材料と工事込みでいくらという請負形式で発注します。丸投げされた工事価格から利益を得るために,材料の質を下げたり,数量を減らしたり、手間を省いたりすることで利益を得ようとします。

 また,設計監理も下請け業者の自主監理になりがちです。自主監理であるため,施工ミスや欠陥箇所を黙認してしまいます。有名な住宅メーカーといえども,下請けの工務店に丸投げ施工を行っているところでは,得てしてズサンな手抜き工事が見られます。ある大手の住宅メーカーでは、20棟もの新築現場を一人で監理していると聞きました。そのため,各現場において十分な監理や指導が出来ず,施工不良を見逃すといいます。いくらメーカー独自の優れた工法や技術を持っていても,十分な施工が行われなければ意味がありません。施工に携わっている人の大半は町の大工であるため,メーカーの施工方法については教育されているものの,十分な技術を修得していないのです。そのため,施工ミスが絶えないのです。大手の住宅メーカーといえども油断は出来ません。度々,施工不良や手抜き工事を理由に、住宅メーカーと対立して損害賠償を請求し民事訴訟を起こしています。阪神大震災では,このような手抜き工事や施工ミスが原因で倒壊した住宅も少なくありませんでした。

<<前へ

1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7

次へ>>